Mrs. GREEN APPLEらサポート、森夏彦(Shiggy Jr.)が語るベーシスト=ヴィンセン・ガルシアの凄み 来日直前に徹底解説! 644e7
ヴィンセン・ガルシアの凄み「さらにすごい人になっていくでしょうね」 5k4lc
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――リスナーとしては、小さい頃からQueenがお好きだったんですよね。
森:Queenは、僕の音楽のルーツです。Queenは奥深くて、曲を選ばないとコピーは難しいですよね。
――「Bohemian Rhapsody」とか、コピーできる気がまったくしないですよね。コーラスを任されてもお手上げですし。
森:Queenはコーラスの再現が難しいですよね。でも、Queenから音楽が好きになって、ロッククラシックをいろいろ聴くようになったのは、僕にとって大きかったです。中学時代くらいからThe Beatles、Led Zeppelin、Deep Purpleとかを聴いてハードな方向に行き、高校時代は90年代のパンク……という感じでした。
――ピアノを通して音楽を学んだ下地もあったわけですから、パンクが好きでありつつもベースのプレイはきちんとしていたんじゃないですか?
森:パンクベーシストでありながら、練習は真面目にしていました(笑)。
――(笑)。テクニック至上主義に対して否定的な人たちの気持ちもわかるんですけど、「テクニックなんて関係ない」と言ったりするのは、常々語弊がある気がするんですよね。ちゃんと弾かないと気持ちいい音はしないし、アンサンブルは崩壊しますですから。
森:テクニックがあった方がいろんな曲が弾けて楽しいですからね。僕はいろんな曲をやりたかったので、練習はちゃんとしていました。
――ヴィンセンはソウルミュージック、R&Bの下地もかなり持っているプレイヤーですが、森さんはそのあたりのエッセンスをどのように身につけていったんですか?
森:そういう音楽は高校の頃から好きだったんですけど、本格的に研究といいますか、やり始めたのは大学に入ってからです。がっつりネオソウル、ジャズとかにハマって、ピノ・パラディーノを聴いてコピーしたり、仲間とセッションをするようになりました。Shiggy Jr.にはその要素がちょっとあるので、結構鍛えられましたね。20代前半頃にそういうのを身につけていった気がします。
――ネオソウルは、どんなのを聴いていましたか?
森:ディアンジェロ、ホセ・ジェイムズ、エリカ・バドゥとかは衝撃を受けました。大学1年、2年くらいの時でしたね。そして、ビルボードライブ東京で働き始めたんです。勤務中はステージを観ずにサーブしなきゃいけないんですけど、聴こえてはくるので(笑)。当時は海外のアーティストの出演が多くて、ジャズ、ブルース、ソウルといったシーンのアーティストもたくさんいましたね。マーカス・ミラーもよく出ていましたし。
――ビルボードライブは、あの距離感で世界の一流プレイを体感できる夢のようなライブハウスですよね。
森:貴重な体験ができますよね。Shiggy Jr.は今年の1月に横浜と大阪のビルボードライブでやったんですけど、楽しかったです。お客さんにとっても観やすい会場だと思います。ヴィンセン・ガルシアの来日公演では指遣いまで見えるでしょうし、ドラムとの絡みがびたっと合う瞬間も体感できるでしょうね。即興的な要素も出てくると思うので、それも楽しいはずです。ドラムとベースの絡みが合う時と合わない時を感じ取りながら観るのも楽しそうですし、びたっと合った時にドラマーと目を合せてニヤッとしたりするんじゃないですか。
――ビルボードライブのような規模のライブハウスは、ミュージシャン同士のアイコンタクトも楽しめますよね。
森:そうなんです。アイコンタクトが直に観れるのは、お客さんは嬉しいと思います。演奏の臨場感をリアルに感じられますから。あのレベルのアーティストがプレイすると、どれだけ難しいことをしても簡単そうに見えちゃいますけど、とんでもないことをやるはずですから、じっと観たほうがいいですよ。
――彼の最新アルバムは、2023年の『Ventura』ですよね。あの作品とかを事前にあらためて聴くと、ライブがますます楽しみになるはずです。
森:僕も今日『Ventura』を聴いてから取材に臨んでいるんですけど、やっぱりすごすぎて笑っちゃいました(笑)。しっかりベースの音がデカいのも最高ですよね。
――彼の好きな曲を挙げるとするならば?
森:「Aprieta」が好きです。途中のベースソロみたいなのがあまりにもすごすぎて、さっき聴いていて笑っちゃいました。バッキングは最小限でドラムとベースだけ、みたいな感じなのに、とても音が厚くて。最小限で聴かせられるのも、完璧な演奏の証拠ですね。曲によってはちょっと後ろの位置に徹するプレイもあって、そこも魅力的です。
――彼のYouTubeも楽しいですよね。気軽に触れてみたらはまる人がたくさんいると思います。
森:ジャミロクワイの「Virtual Insanity」を弾いてる動画もすごいですよね。途中に入れてくるパッセージがすごすぎて(笑)。
――森さんは、YouTubeはやらないんですか?
森:今のところ考えてはいないです。でも、「弾いてみた動画をやってください!」という声をいただいたりもするので、そういうのをアップできたら楽しいかもしれないですね。
――「森さん、YouTubeやってるのかな?」と昨晩調べたら、出てきたのがShiggy Jr.の「サマータイムラブ」の“踊ってみた”でした。
森:恥ずかしいなあ(笑)。10年くらい前のやつですよ。さすがに新しいものに更新したくなってきますね。
――ベーシストのYouTubeやSNSの動画は、ベースに関心を持っていただけるいいきっかけになるはずです。
森:入口になるというのはありますよね。僕も川崎哲平さんのYouTubeを時々観ています。
――ベースの魅力は、どういうところにあると思っていますか?
森:始めるのが簡単、というのは、実は結構大きいのかなと思います。挫折しにくいんです。それに、とても奥の深い楽器ですよね。低音のベースとドラムはアンサンブル、バンドでは必要な存在で、ノリの支配力も大きいです。ノリのイニシアチブを握ることができて、自分のプレイひとつで楽曲の色を変えられるのは、魅力として大きいですよ。
――ベースは楽曲を俯瞰で捉えて、音楽の理解を深められる楽器でもあるんだと思います。
森:ベーシストにプロデューサーが多いのも、それが理由なのかもしれないですね。ドラムも担っているリズムの役割、ギターやボーカルが担っている役割――ある意味、全部の要素の接着剤、潤滑油としてベースがあるので、おっしゃる通り全体を見れる人が多いのかもしれないです。
――ヴィンセン・ガルシアもベーシストとしての仕事を多方面に発展させて、今後活躍の場をさらに広げていくんだと思います。
森:今でもすごいんですけど、さらにすごい人になっていくでしょうね。
――細かな話ですが……彼が「YAMAHA」のベースを愛用しているのが、日本人として密かに嬉しかったりもします。
森:しかも、ちゃんと「YAMAHA」のベースっぽい音が出てるんですよね。いい感じの美味しいミドル、粒立ちがいいのががっつりと出てますから。僕も彼が「YAMAHA」のベースを弾いてる動画を初めて観た時は嬉しかったです(笑)。
――今回の彼の来日公演は、東京、横浜、大阪で各2ステージ、合計6ステージ。全国のビルボードライブを巡ることになります。ビルボードライブ東京で働いていた森さんからおすすめできるあの会場の魅力はありますか?
森:月並みですが、お酒もご飯もめちゃくちゃ美味しいです。ちょっと贅沢な気持ちを味わえる会場なんですよ。あと、ビルボード東京は夜景が広がるスペシャルな会場でもあるんです。あのスペシャルな場所でヴィンセンの演奏とごはんやお酒と一緒に味わったら、ライブがさらに楽しくなるんじゃないかなと思います。
――森さんはサポートのお仕事でも大忙しですよね。夏にかけてライブが増えるんじゃないですか?
森:夏フェスがありますからね。ミセスのほかにもTele、Lavtなども予定しています。Shiggy Jr.もイベントに出る機会がいくつかあって、10月には富山と東名阪をまわるツアーをします。Shiggy Jr.は超マイペースなんですよ(笑)。みんながそれぞれ仕事をしていたりするので、集まれる時に集まって、忙しい時は休むという理想的なペースなんです。僕自身もサポートのお仕事もさせていただきながら、いいバランスでやれています。楽しいですよ。音楽は新しいものもどんどん出てきますし、昔の音楽だって最高だし、飽きることはないでしょうね。