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夏でもチョコが溶けない〝魔法瓶〟開発担当者の愛、2年がかりで結実

真夏でもチョコが溶けない魔法の瓶…。そんなユニークな商品が開発されました。商品が生まれたきっかけは、無類のチョコレート好きである開発担当者の深すぎるチョコレート愛にあったといいます。
SNSで話題となったのは、ピーコック魔法瓶工業(本社・大阪市)が開発した「チョコレート魔法瓶」です。大きさは長さ15.9センチ、255グラム。気温40度の暑さであっても、一般的にチョコレートが溶けないとされる25度以下の温度を約12時間キープできるといいます。
チョコレート魔法瓶をリターン品にクラウドファンディングを実施したところ、6月9日現在で目標金額の30倍が集まりました(クラウドファンディングは20日まで)。
SNSで商品が紹介されると、「え、容器も可愛いし溶けないし最高やん」「ヤダかわいい欲しい」と話題になっています。
開発担当者に取材すると、チョコレート魔法瓶の仕組みを説明してくれました。
魔法瓶は「冷却キャップ」と筒部分の「ホルダー」でできています。冷却キャップに水を入れて冷凍庫で凍らせ、ホルダーにチョコレートを入れたら、冷却キャップをしめます。
ホルダーは真空断熱の二重構造で熱伝導率が限りなくゼロに近い設計になっているので、冷たさがキープできるといいます。
担当者は、「魔法瓶の専門メーカーならではのノウハウを生かして、高い保冷力を実現しました。これまでにない発想の、まったく新しい商品です」と話します。
なぜこのような商品が生まれたのでしょうか。
実は、チョコレートが大好きな開発担当者の「夏でも外で冷えたチョコレートが食べたい」という夢が、開発の原動力だったといいます。
デザイン部の村田圭史さんは、「僕は常に冷やしたチョコが好きで食べていました。チョコは好きですが、夏の高温で溶けかけた感じは苦手です」と話します。
「夏に家だけでなく、外でも冷えたチョコを食べることができればうれしいのにと思っていました。中でも細い線上のチョコを幾重にも折り重ねた某メーカーの商品が大好きで、外でもパリパリのチョコを食べたいと思っていました」
SNSなどを調べると、同じような思いを持っている人が複数見つかりました。
ピーコック魔法瓶工業は創業75年。長い歴史の中で培った魔法瓶技術でこれまで温度と向き合ってきました。
2023年の夏、「長年のノウハウを生かせばチョコレート魔法瓶が作れるかも」と思い立ったといいます。
商品企画部、技術部、広報・マーケティング部のメンバーも巻き込んで社内に開発チームを立ち上げましたが、開発は一筋縄にはいきませんでした。
通常の魔法瓶だけでは、チョコを守るだけの冷たさがキープできません。
以前から大型のクーラーボックスや小型の冷蔵庫はありますが、コンパクトなボトルで、電源も使うことなく、どうやってチョコを夏の高温から守るだけの冷たさをキープするかが難題でした。
頭を悩ませる中で、「保冷キャップに氷を詰める」というアイデアを思いつき、試作を重ねました。
冷やす能力を上げるためには、冷却キャップをできるだけ大きくするのが望ましいですが、大きくしすぎると持ち運びはしづらくなります。
全体のコンパクト感を維持した上で、冷却キャップの冷却性能のアップ(冷却部の最大化)と保冷容器内のチョコレート用スペースの最大化のバランスを取りながら試作品を作りました。
その結果、「チョコがそこそこ入ったうえで冷たさを長くキープできるポイント」を見つけ、2年がかりで製品化にこぎつけたといいます。
ボトルには、一口サイズの個包装タイプやキャンディー包みのチョコなら25個、箱入りの個包装タイプなら35個が入るそうです。
デザインにもこだわり、チョコ好きに刺さるよう、板チョコをイメージしたデザインなど4種類をそろえました。
村田さんは、チョコレート魔法瓶でチョコを楽しむフィールドが広がることを願っています。「2025年も暑い夏が到来します。そのような中でも、チョコレート魔法瓶でおいしいチョコレートをお楽しみいただきたいと思います」
クラウドファンディングは応援購入サイト「Makuake」で6月20日まで実施しています。終了後、量産化も検討しているといいます。販売する際には、ピーコック魔法瓶工業の公式サイトでお知らせしてくれるそうです。
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