竹中 謙輔
佐賀城跡の南堀の起伏堰近くで行われた排水ポンプ車を使って堀の水を多布施川に流す実証試験
佐賀市は市中心部の浸水被害を軽減しようと、「調整池」として活用する佐賀城跡周辺の堀の貯水容量をさらに増やすための実証試験に取り組んでいる。本年度は排水ポンプ車で強制的に堀の水を川に流し、確保できる貯水容量の変化や河川流域への影響を確認する。
城跡を囲む堀には多布施川の水が流れ込んでいる。市は2016年、川と接する南堀の東端地点に可動式の「起伏堰(ぜき)」を設置。堀に自然流入していた川の水を制御できるようになり、全国で初めて城跡の堀を調整池として活用し始めた。
23年からは、堀周辺の8カ所の「樋門」で水位を調整。川の水の流入を遮断し、6~9月ごろに南堀の中央に位置する樋門だけを開けて、堀の水を有明海へ流している。これらの対応で約5万8千トン(25メートルプール約193杯分)の水をためることが可能となっている。
6日の実証試験では、県所有のポンプ車を借り、南堀の起伏堰付近から多布施川への強制排水を実施。市河川砂防課によると、試験開始から約5時間後の速報値で堀の水位が約7センチ下がった。約6400トンの貯水容量が見込まれる。強制排水で急速に水位を下げても、堀や多布施川下流、下流域水路の護岸などに異常はなかったという。今後、ポンプ車を使った排水試験を複数回重ね、本格運用を目指す。
試験現場を訪れた坂井英隆市長は「近年は雨の降り方が変わってきている。堀の貯水容量をさらに拡大できるよう、課題を含めて整理し、今後の活用の在り方を検討したい」と話した。
(竹中謙輔)