藤井聡太竜王への挑戦権を争う第38期竜王戦決勝トーナメントのメンバーが出揃った。竜王戦は唯一、挑戦者決定戦が三番勝負である。
注目はなんといっても、ランキング戦の時から話題になっていた5組優勝の山下数毅三段だろう。奨励会三段でありながら、前期は6組決勝進出。藤本渚六段に敗れて優勝こそならなかったものの、棋士以外では初めて5組への昇級を決めた。棋士以外では昇級者決定戦に回れないため、ランキング戦で勝つしかなく非常に難易度が高い。そして今期は5組の2回戦で藤本に前期の借りを返す。勢いは止まらず、5組の決勝に進出して4組への昇級も決めた。これにより、奨励会での成績と合わせて10月1日付けでの四段昇段をほぼ手中にした。そしてさらに5組の決勝も勝ち、決勝トーナメント進出を決めた。
決勝トーナメント初戦で山下と戦うのは6組優勝の谷合廣紀四段。東京大学卒業の研究者でもある、異色の棋士だ。こちらも初の決勝トーナメント進出。四間飛車を得意とする振り飛車党で、山下が居飛車を持っての対抗形となるだろう。
4~6組の山を勝ち抜いた棋士を待つのが1組5位の森内俊之九段。竜王2期など実績十分のレジェンド棋士で、決勝トーナメント最年長ながらその実力は健在だ。
挑戦者決定戦まで1勝と、最も有利な位置でスタートするのが1組優勝の八代弥七段。丁寧な棋風の居飛車党で、まだ順位戦がC級2組というのが不思議なくらいの実力者だ。まだタイトル戦での挑戦者決定戦に進出したことがないが、ここで殻を破ることができるだろうか。こちらが左の山となる。

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右の山ではやはり2組優勝の永瀬拓矢九段が本命だろう。竜王戦ではまだ挑戦経験はないが、この一年で王座戦、王将戦、名人戦、王位戦と4つもタイトル挑戦を果たした。タイトルホルダーの壁は厚いが、挑戦争いでは最有力だろう。
対するは1組3位のベテラン木村一基九段で、王位獲得経験の他に竜王挑戦経験もある。
その隣で対戦するのがA級入りや棋戦優勝を果たして、いよいよ指し盛りの3組優勝の近藤八段と、2組2位の高見泰地七段。勝者は1組2位で前期挑戦者の佐々木勇気八段と対戦する。佐々木と高見となれば、石田和雄九段門下の同門対決だ。
最高棋戦なだけに、一局一局の重みが大きい竜王戦決勝トーナメント。まずは山下三段がさらなる竜王戦ドリームなるか、注目したい。
文=渡部壮大
放送情報【スカパー!】
第32期 銀河戦 決勝トーナメント 決勝戦 丸山忠久銀河 vs 藤井聡太竜王・名人
放送日時:2025年6月27日(金)13:00~
放送チャンネル:囲碁・将棋チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります